完全密室殺人事件?!

創作劇場〜1〜(1/4)

【今回のコラムはフィクションです】
第1弾は本日より毎週木曜or金曜にUPされます−全四章−(予定)

ミステリィ(ミステリー)小説によくある「タイトル」になってしまって恐縮だが、最後の「?!」に普通(!?)の密室殺人とは異なる奇妙さを表していることを最初にお伝えしておく。

−1−

被害者の名前はN君、N君はまだ小学生であった、しばらく彼のことをN君と呼ぶことにする。何故、本名を出さないかは、今は言えない。本名を言うことでこの話の面白さが半減してしまうからだ。

事件は友人からの電話をN君に取次ぐため、N君の母親が2階の部屋に向かった時に起こった。いや実際に起こったのはこの時刻より前(時間的に過去)であろう。

「Nちゃん、○○○ちゃんから電話よ〜降りていらっしゃ〜い」母親は最初、階段の下からN君を呼んだ。返事の代わりに金槌で何かを壁に打ち付けるような音が聞こえた。「Nちゃん何をしてるの?電話よ」母親は階段を上りながら呼びつづけた。

部屋の前で再度「Nちゃん、○○○ちゃんから電話よ、何してるの?」呼びかけたが、返事は無い。中でガタゴトと机の引出しを開け閉めするような音がしたあとは物音ひとつしなくなった。

母親はもう一度、呼びかけたが返事がないので、引き戸に手を掛けた。しかし開かない、引き戸なのでカギはない、しかし開かない。再度、戸を叩きながらN君を呼んだ。誰かとケンカをして泣きながら帰ってきたときなど、「ほっといて」と言って母親の話を聞かなかったりする事はあったが戸を開けずに黙り込むことは今までに一度も無かった。母親は急に心配になり、激しく引き戸を何度も叩いた「ドン、ドン・・・」家中に聞こえるぐらいの音である、父親はその音に驚き、階段の下から呼びかけた。

「どうした?受話器上がったままだぞ〜」
「それどころじゃないの、Nちゃんの部屋が開かないの」

父親は母親の慌てぶりが多少気になり、電話を代わりに出てあとで掛け直す旨を伝えて切った。

「本当に中に居るのか?どっかへ出掛けたんじゃないのか?」階段を上りながら、父親は母親に声を掛けた。
「でもさっきまで物音がしてたんですよ、引き出しの開け閉めする音も」

父親は引き戸に手を掛けた、びくともしない、引き戸全体が接着剤で固められたか、釘で打ち付けられたみたいだ、父親はそう思いそのことを口にした。

「そう言えば金槌で打ち付けるような音がしていました」母親は答えた。

「何でそんな事をしたんだ?、窓から外に出たのかな?ちょっと見てくる」父親はそう言い残して玄関から庭に出た。下から見上げた様子では窓もしっかりと締まってる。念のために、庭にある物置から梯子を出しN君の部屋に掛け梯子を上った、やはり窓はしっかり締まっておりカギも掛かっている。

N君の部屋の窓は木枠のガラス窓だ。カギはネジ式の内側から掛ける方式で、内側から押しながら捻り込むものであった。当然窓から出て後からカギを掛ける事は出来ない。

もう一度父親はN君の部屋の前に戻った、母親は部屋の前の廊下にしゃがみ込んでいた。

「外に行った様子はないよ、窓にはしっかりカギが掛かっていた」「仕方ない壊そう」父親は倉庫から持ってきた釘抜きを見せた。

引き戸の隙間に釘抜きを差込み、てこの力を利用して隙間を少しずつ広げていった。「メリメリッ」とベニヤ板の合板が剥れるように少しずつ引き戸は壊されていく、しかしやはり内側から釘で引き戸を固定しその上から接着剤で隙間を埋めたようで、引き戸はそう簡単には開かず、結局引き戸全体の枠組みを残してベニヤ板が剥れた。

丁度「日」の字に枠組みだけ残り、部屋を見渡す事が出来た。

「あっ」母親は小さく悲鳴をあげた。
畳の上には明らかに血痕と思われる赤い線が付いていた。引きずられたあとであり、その方向に目を向けると、そこには胸から腹にかけ自分の血で真っ赤になったN君が横たわっていた。


・・・来週につづく。http://d.hatena.ne.jp/tsurinews/20040819